星の和名・呼び名ST-04

星の和名一覧:すばる・北斗七星から冬の星まで、季節ごとの星の名前と由来・地方名

公開 · 執筆 星座ものがたり 編集部

案内:羽白尾 コウくんなんでも知ってる。たまに間違えたことも書く。先に謝っとく。ごめん。星座ものがたり 編集部 · 古典の英訳・博物館や天文台の資料で確認:2026-10-28
コウくん

星の和名は、漁師や農家が時刻や季節を知るために星に付けた日本の呼び名です。同じ星でも、土地ごとに違う名前で呼ばれていました。

あらすじ

この記事では、次の15項目を順に説明します。

  1. 結論:星の和名とは? どんな名前がある?
  2. 星の和名一覧:冬の星の和名は?
  3. 星の和名一覧:春の星の和名は?
  4. 星の和名一覧:夏の星の和名は?
  5. 星の和名一覧:秋の星と北極星の和名は?
  6. 星の和名は、どんな由来で付けられた?

ほか9項目は下の目次から。

プレアデス星団(すばる)。青白い星がひとかたまりに集まり、まわりを淡いガスが包んでいる
プレアデス星団(すばる)。青白い星がひとかたまりに集まり、まわりを淡いガスが包んでいる写真: NASA, ESA, AURA/Caltech, Palomar Observatory / Public domain
この記事の内容(15項目)
  1. 結論:星の和名とは? どんな名前がある?
  2. 星の和名一覧:冬の星の和名は?4
    1. この節の先頭へ
    2. プレアデス星団の和名は? すばると六連星とは?
    3. 冬の大三角の星の和名は? 青星・白星とは?
    4. カノープスの和名は? 布良星・横着星とは?
    5. カペラやふたご座にも和名はある?
  3. 星の和名一覧:春の星の和名は?3
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    2. 北斗七星の和名は? 四三の星・舵星とは?
    3. 麦星・真珠星は、昔からの和名?
    4. かんむり座の和名は?
  4. 星の和名一覧:夏の星の和名は?2
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    2. 織姫星と彦星は和名? メンタナバタとは?
    3. 南斗六星の和名は?
  5. 星の和名一覧:秋の星と北極星の和名は?3
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    2. カシオペヤ座の和名は? 山形星・碇星とは?
    3. フォーマルハウトの和名は?
    4. 北極星の和名は? 子の星とは?
  6. 星の和名は、どんな由来で付けられた?2
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    2. 漁師はなぜ星の和名を時計にした?
    3. 農村の星の和名は、暦の役目をした?
  7. 同じ星の和名は、地域でどう違う?1
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    2. 同じ名前が、違う星を指すこともある?
  8. 星の和名と中国名(漢名)の違いは?
  9. 野尻抱影は、星の和名で何をした?2
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    2. 野尻抱影が名付けた星の名前はある?
    3. 野尻抱影のあとも、和名は集められている?
  10. 星の名前で、かっこいい和名は?
  11. 金星など、惑星にも和名はある?
  12. 同じ星の、地域ごとの呼び名はどう違う?
  13. 星の和名を思い出しながら夜空を見るには?
  14. 星の和名でよくある質問は?6
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    2. 星の和名一覧はどこで見られる?
    3. プレアデス星団の和名は?
    4. 北斗七星の和名は?
    5. シリウスの和名は?
    6. 彦星と織姫星の和名は?
    7. 星の和名と中国名(漢名)の違いは?
  15. 出典

星の和名は、日本の暮らしの中で星に付けられた呼び名です。すばるや北斗七星の「四三の星」がよく知られています。

和名の多くは、漁や畑仕事の目印として使われた名前です。そのため、同じ星でも土地ごとに名前が違います。

この記事では、明るい星・星座・星団の和名を季節ごとの一覧にしました。名前が伝わっていた地域も、資料にある範囲で書いています。

この記事で分かることは、次のとおりです。

  • 冬・春・夏・秋の星の和名の一覧(由来と地域つき)
  • すばる・北斗七星・カノープスの地方名
  • 和名の付き方の型(形・色・時刻・方角・地名)
  • 同じ星が、地域でどう呼び分けられていたか
  • 中国名(漢名)と和名の違い
  • 和名を集めた野尻抱影の仕事

ポイントはここです。星の和名は「きれいな言葉」である前に、暮らしの道具でした。

結論:星の和名とは? どんな名前がある?

星の和名とは、日本で古くから使われてきた星の呼び名です。明るい星や目立つ星の集まりに、土地ごとの名前がありました。

大きく分けると、和名には2つの種類があります。

  • 暮らしの中で生まれた名前:すばる、四三の星、青星、布良星など
  • 近代に作られた名前:真珠星、みなみのひとつ星など

前者は、農村や漁村で親から子へ受け継がれた名前です。後者は、星の文筆家や天文学者が新しく名付けたものです。

日本の星の和名を集めた野尻抱影は、『日本星名辞典』で約900の呼び名を整理しました。ここからは、季節ごとに主な和名を見ていきます。

コウくん

和名は、土地の言葉と一緒に覚えると忘れにくいです。「どこで、何をする人が呼んだ名前か」に注目してみてください。

星の和名一覧:冬の星の和名は?

季節ごとの主な星の和名と、伝わっていた地域
星・星団主な和名見立て・由来伝わっていた地域
プレアデス星団(おうし座)すばる(昴)、六連星(むつらぼし)、羽子板星星が1つに集まっている(統ばる)すばるは全国。六連星・羽子板星は地方による
ヒアデス星団(おうし座のV字)釣鐘星(つりがねぼし)V字を寺の釣り鐘に見た地方による。長野県諏訪地方・北海道江差町・静岡県熱海市網代など
アルデバラン(おうし座)あかぼし(赤星)、すばるのあとぼし赤い色。すばるの後から昇る資料に地域の記載なし。アカボシは新潟県佐渡市姫津でも記録
オリオン座の三つ星三つ星、サンコウ(三光)、からすき星など3つの星。小三つ星と合わせて農具のからすきサンコウは北海道函館市・青森県むつ市など。くわしくはオリオン座の記事
ベテルギウス・リゲル(オリオン座)平家星(へいけぼし)・源氏星(げんじぼし)平家の赤旗と源氏の白旗地方による。富山県でも記録
シリウス(おおいぬ座)青星(あおぼし)、大星(おおぼし)明るく大きく、青白く見える資料に地域の記載なし。アオボシは北海道函館市など、アオミノホッサマは富山県黒部市生地
プロキオン(こいぬ座)シロボシ(白星)(資料に説明なし)富山県(町村の記載なし)
カノープス(りゅうこつ座)布良星(めらぼし)、横着星、源助星など南の地平線すれすれに出て、すぐ沈む房総半島・瀬戸内・奈良など。地域ごとの表を本文に
カペラ(ぎょしゃ座)サドボシ(佐渡星)、サキボシ(先星)佐渡島の方角から昇る。イカ漁の時刻の目安サドボシは富山県魚津市経田、サキボシは新潟県佐渡市姫津
カストル・ポルックス(ふたご座)フタツボシ(二つ星)並んだ2つの星富山県富山市四方・新湊
出典(7件)

冬の星の和名は、一覧のとおり数が多く、すばる・青星・平家星などがよく知られています。冬は明るい星が多く、漁の目印にもよく使われました。

オリオン座のつづみ星や三つ星の地方名は、オリオン座の神話でくわしく紹介しています。

プレアデス星団の和名は? すばると六連星とは?

プレアデス星団の和名は「すばる(昴)」です。地方によっては「六連星(むつらぼし)」「羽子板星」とも呼ばれました。

さいたま市青少年宇宙科学館の解説では、すばるは「統ばる」の意味とされます。1つにまとまっている、という意味の言葉です。

平安時代の清少納言は『枕草子』で「星はすばる」と書きました。平安時代から親しまれていた名前だと分かります。

プレアデス星団(すばる)。青白い星がひとかたまりに集まり、まわりを淡いガスが包んでいる
プレアデス星団(すばる)。青白い星がひとかたまりに集まり、まわりを淡いガスが包んでいる写真: NASA, ESA, AURA/Caltech, Palomar Observatory / Public domain

すばるには、ほかにもたくさんの地方名が記録されています。北海道や佐渡の漁師の呼び名は、あとの「地域でどう違う?」の表で比べます。

冬の大三角の星の和名は? 青星・白星とは?

冬の大三角では、シリウスが「青星」、プロキオンが「白星」と呼ばれました。ベテルギウスは「平家星」です。

国立天文台の渡部潤一さんのコラムによると、シリウスは「青星」「大星」と呼ばれました。明るく大きく、青白く見えるためです。

富山県の黒部市生地では、シリウスを「アオミノホッサマ」と呼びました。アンタレスは「アカミノホッサマ」です。

県内の和名を調べた増田正之さんは、2つの名に注目しました。赤い星にも緑が、青い星にも赤がちらりと見える、という細かな観察です。

カノープスの和名は? 布良星・横着星とは?

カノープスの和名には「布良星(めらぼし)」「横着星」などがあります。南の地平線すれすれに見える星です。

日本からは、南の空の低いところに少しだけ姿を見せて、すぐ沈みます。その見え方が、土地ごとの名前になりました。

渡部潤一さんのコラム「寿星」が、各地の呼び名を紹介しています。表にまとめます。

呼び名伝わっていた地域名前のわけ(資料の説明)
布良星(めらぼし)房総半島布良の村の漁船がしけで行方不明になり、その魂が星になった。見えると暴風雨の前ぶれ
源助星・源五郎星奈良・大和地方悪天候の前ぶれ
横着星瀬戸内地方地平線をはうように動いてすぐ沈むので、なまけ者に見える
讃岐の横着星岡山見える方角の地名を付けた
伊予の横着星尾道見える方角の地名を付けた
無精星小豆島(横着星と同じ見立てと考えられる)
道楽星淡路島(資料に説明なし)
やばた星(山の端星)丹後地方南の山の端に現れる
にじり星徳島(資料に説明なし)
鳴門星・秋蛸星播州秋蛸星は、この星が見えるころ蛸がたくさん取れるため

同じ1つの星が、海の向こうの地名で呼ばれていました。 岡山から見れば讃岐、尾道から見れば伊予の方角に出るからです。

千葉県館山市船形では、2009年の聞き取りでも「メラボシ」が記録されています。北の風の、空気の澄んだ日に見えると伝わっていました。

コウくん

カノープスは、南の地平線まで見通せる場所でないと見えません。冬の夜、海辺でシリウスの真下あたりを探してみてください。

カペラやふたご座にも和名はある?

カペラやふたご座の2つの星にも、富山県や佐渡の和名が記録されています。

富山県魚津市経田では、カペラを「サドボシ」と呼びました。北東の佐渡島の方角から昇るためです。

サドボシが夕方に見えるころは、イカ釣りの時刻の目安にしました。明け方に見えるころは、漁から帰る目安だったそうです。

ふたご座のカストルとポルックスは、富山市四方や新湊で「フタツボシ」と呼ばれました。

2つの星の「金星・銀星」の呼び名と神話は、双子座の神話でまとめています。

星の和名一覧:春の星の和名は?

季節ごとの主な星の和名と、伝わっていた地域
星・星団主な和名見立て・由来伝わっていた地域
北斗七星(おおぐま座)四三の星(しそうのほし)、舵星(かじぼし)、七つ星3と4の目を出した2つのさいころ。船の舵資料に地域の記載なし。カジボシは富山県魚津市、ナナツボシは三重県尾鷲市須賀利町で記録
アークトゥルス(うしかい座)ムギボシ(麦星)、アンサマボシ。近代の名に珊瑚星(麦星の由来は資料に説明なし)ムギボシは全国的。アンサマボシは富山市八尾
スピカ(おとめ座)真珠星(しんじゅぼし。野尻抱影の命名)、アネサマボシ純白の輝きを真珠にアネサマボシは富山県の旧八尾町仁歩
かんむり座ヘッツイボシ、オクドサンかまど(へっつい・おくど)ヘッツイボシは富山市緑町、オクドサンは南砺市福光

出典: 渡部潤一「星空の散歩道」Vol.4「北斗七星」(三菱電機 DSPACE) / とやまの星の和名(増田正之『越中の星ものがたり』より) / 渡部潤一「星空の散歩道」Vol.16「春の夜空を彩るアーチ:春の大曲線」(三菱電機 DSPACE)

春の星の和名は、北斗七星の「四三の星」「舵星」や、アークトゥルスの「麦星」が代表です。

北斗七星の和名は? 四三の星・舵星とは?

北斗七星の和名は「四三の星(しそうのほし)」や「舵星(かじぼし)」です。「七つ星」とも呼ばれました。

渡部潤一さんのコラムでは、四三の星は2つのさいころに見立てた名です。3の目と4の目を出したさいころです。

ひしゃくの「ます」の4つの星と「柄」の3つの星を、目に見たと考えられます。舵星は、船の舵に見立てた名前です。

山の稜線の上に見える北斗七星。ひしゃくの形に7つの星が並んでいる
山の稜線の上に見える北斗七星。ひしゃくの形に7つの星が並んでいる写真: Caldwbr / CC0

富山県では、海沿いの土地で北斗七星の和名がいくつか集められています。

  • カジボシ:魚津市
  • カズボシ:朝日町
  • キタノカジボシ:氷見市
  • スシャクホッサマ:黒部市

三重県尾鷲市須賀利町では、2009年に「ナナツボシ」が記録されています。

麦星・真珠星は、昔からの和名?

アークトゥルスの「麦星」は、全国で呼ばれていた和名です。一方、スピカの「真珠星」は、近代に野尻抱影が付けた名前です。

富山県の資料は、ムギボシを全国的な呼び名として紹介しています。ただし、なぜ麦なのかは、今回の資料には説明がありませんでした。

渡部潤一さんのコラムによると、スピカを真珠星と名付けたのは野尻抱影です。アークトゥルスの「珊瑚星」は、天文学者の山本一清が付けました。

真珠星と珊瑚星は、言い伝えではなく近代の命名です。 どちらも、星の色を海の宝物にたとえた美しい名前です。

古い地方名もあります。富山市八尾ではアークトゥルスを「アンサマボシ」、スピカを「アネサマボシ」と呼びました。

かんむり座の和名は?

かんむり座は、富山県で「ヘッツイボシ」「オクドサン」と呼ばれました。どちらも、かまどを指す言葉です。

富山市緑町ではヘッツイボシ、南砺市福光ではオクドサンです。半円に並ぶ星を、台所のかまどに見たのでしょう。

星の和名一覧:夏の星の和名は?

季節ごとの主な星の和名と、伝わっていた地域
星・星団主な和名見立て・由来伝わっていた地域
ベガ(こと座)織姫星(おりひめぼし)、メンタナバタ七夕の織女織姫星は全国。メンタナバタは富山県(2星合わせてタナバタホッサマ:黒部市生地)
アルタイル(わし座)彦星(ひこぼし)、オンタナバタ七夕の牽牛(牛飼い)彦星は全国。オンタナバタは富山県
アンタレス(さそり座)赤星・豊年星・酒酔い星など赤い色。くわしくはさそり座の記事資料に地域の記載なし。地域の分かる名はさそり座の記事
さそり座のS字魚釣り星(うおつりぼし)、釣り星釣り針瀬戸内海・能登・沖縄など
南斗六星(いて座)ミナミノカジボシ(南の舵星)北斗七星の舵星に対する南の舵富山県氷見市
出典(4件)

夏の星の和名は、七夕の「織姫星」「彦星」と、さそり座の「魚釣り星」がよく知られています。

さそり座の釣り針の和名と、アンタレスの地方名は、さそり座の神話にまとめています。

織姫星と彦星は和名? メンタナバタとは?

織姫星(ベガ)と彦星(アルタイル)は、日本で広く使われる呼び名です。もとは中国の織女・牽牛の話から来ています。

八千代市立郷土博物館の資料によると、中国では牽牛星は農事を知らせる星でした。織女星は、養蚕や機織りの星です。

2つの星は、後漢(西暦30〜220年)のころから恋人同士とされるようになりました。この話と行事が日本に伝わり、七夕になりました。

富山県には、もっと土地に根ざした呼び名もあります。ベガは「メンタナバタ」、アルタイルは「オンタナバタ」です。

黒部市生地では、2つを合わせて「タナバタホッサマ」とも呼びました。

南斗六星の和名は?

いて座の南斗六星は、富山県氷見市で「ミナミノカジボシ」と呼ばれました。名前の形から、北斗七星の「カジボシ」と対になる呼び名と考えられます。

中国でも、北の「北斗」に対して、いて座の星を「南斗」と呼びました。南北に2つのひしゃくがある、という見方は同じです。

星の和名一覧:秋の星と北極星の和名は?

季節ごとの主な星の和名と、伝わっていた地域
星・星団主な和名見立て・由来伝わっていた地域
ペガスス座の四辺形マスボシ(枡星)米などをはかる枡富山県射水市大島
カシオペヤ座イカリボシ(碇星)船の碇富山県入善町。全国各地の漁村でも見つかっている
フォーマルハウト(みなみのうお座)あきぼし、みなみのひとつ星(野尻抱影の命名)秋の空にただ1つ輝く1等星近代の命名なので地域は無い
北極星(こぐま座)ネノホシ(子の星)、キタノホシ、メジルシボシなど動かない北の目印ネノホシは愛知県蒲郡市形原・富山県朝日町、キタノホシは愛知県吉良町

出典: とやまの星の和名(増田正之『越中の星ものがたり』より) / 渡部潤一「星空の散歩道」Vol.22「みなみのひとつ星の輝き」(三菱電機 DSPACE) / 北尾浩一「天文民俗調査報告(2009年)」大阪市立科学館研究報告20

秋の星の和名は、カシオペヤ座の「イカリボシ」、ペガスス座の四辺形の「マスボシ」などです。

秋は明るい星が少ない季節です。そのぶん、星の並びを道具の形に見た和名が目立ちます。

カシオペヤ座の和名は? 山形星・碇星とは?

カシオペヤ座の和名は、富山県入善町で見つかった「イカリボシ(碇星)」が資料で確かめられます。

富山県の資料によると、この呼び方は全国各地の漁村で見つかっています。W字を、船の碇の形に見たものと考えられます。

「山形星」という呼び名もよく紹介されます。ただ、今回は地域の分かる資料で確かめられませんでした。

フォーマルハウトの和名は?

フォーマルハウトは「あきぼし」「みなみのひとつ星」と呼ばれます。どちらも野尻抱影が付けた名前です。

秋の南の空で、1等星はこの星だけです。さびしく1つだけ光る様子が、そのまま名前になりました。

渡部潤一さんのコラムには、別の話も出てきます。「みなみのひとつ星」を、カノープスの呼び名として使った地方もあったそうです。

北極星の和名は? 子の星とは?

北極星の和名は「子の星(ねのほし)」が知られています。子は十二支の方角で北を表すので、北の星という意味です。

北極星は、ほとんど動かない星です。そのため漁師は、夜の海で方角を知る目印にしました。

大阪市立科学館の研究報告で、北尾浩一さんは2009年の聞き取りを記録しています。

  • ネノホシ:愛知県蒲郡市形原。山と組み合わせて方角を知った
  • キタノホシ:愛知県吉良町。昭和24年生まれの漁師が、いまも目印にしていた

富山県でも、海沿いを中心に多くの呼び名が集められています。

  • ネノホシ:朝日町
  • メジルシボシ:富山市
  • オヤボシ:射水市下村
  • メアテボシ:入善町舟見
  • ヒトツボシ・キタノハシボシ:宇奈月
コウくん

北極星は、北斗七星のひしゃくの先の2つの星を、5倍ほど延ばした先にあります。和名の「舵星」と「子の星」を、セットで探してみてください。

星の和名は、どんな由来で付けられた?

星の和名の由来は、主に形・色・時刻・方角・地名の5つの型に分けられます。

ここまでの和名を、付き方の型ごとに並べてみます。

付き方の型和名の例どの星暮らしとのつながり
道具の形に見立てる四三の星、からすき星、釣鐘星、マスボシ、イカリボシ、ヘッツイボシ北斗七星、三つ星と小三つ星、ヒアデス星団、ペガススの四辺形、カシオペヤ座、かんむり座さいころ・農具・寺の鐘・枡・碇・かまどなど、身近な道具
色で呼ぶ赤星、青星、白星、平家星・源氏星アルデバラン・アンタレス、シリウス、プロキオン、ベテルギウス・リゲル赤旗と白旗のように、物語と結びつくことも
時刻や季節を知る役星、秋蛸星、タイツリボシすばる・三つ星・シリウスなど、カノープス、アンタレスイカ・蛸・鯛の漁の時期や時刻
方角を知る子の星、キタノホシ、メジルシボシ北極星夜の海で北を知る
見える方角の地名サドボシ、讃岐の横着星、布良星カペラ、カノープス星が昇る方角の島や土地

和名は「何に見えるか」と「何の役に立つか」の2つから生まれています。 この記事の一覧には、神話の人物の名はほとんど出てきません。

漁師はなぜ星の和名を時計にした?

漁師は、星が昇る順番を時計の代わりに使いました。イカ釣りの目当てにする星は「役星(やくぼし)」と呼ばれました。

北尾浩一さんの報告によると、北海道のイカ釣り漁師は、東から順に昇る星を目安にしました。すばる、三つ星、シリウスの順です。

新潟県佐渡市姫津の漁師は、星の出をもっと細かく数えていました。

昇る順姫津での呼び名どの星(報告の説明)前の星からの時間
1ワボシ(和星)暗い星。おひつじ座のα星か(最初)
2サキボシ(先星)カペラ1時間足らず
3スモルすばる約1時間
4アカボシアルデバラン約1時間
5カラスキ三つ星と小三つ星(報告に記載なし)

イカは、星の出の15分くらい前から釣れ始めたと語られています。ワボシからカラスキまでの星を「やくぼし」と呼びました。

北海道函館市大船町の漁師は、昔はたいてい時計を持っていなかったと話しています。星の上がる時刻を、体で覚えていたわけです。

農村の星の和名は、暦の役目をした?

農村では、星の見え方が、雪や種まきの時期を知る目安になりました。すばるにまつわる言い伝えが、富山県に残っています。

  • 上市町千石:すばるが西の空にあるようになると雪が降る
  • 五箇山:すばるが頭の上に来たとき、そばをまくとよく取れる
  • 朝日町宮崎:すばるが山にかかると海がしける

オリオン座の三つ星と小三つ星を、田畑を耕す「からすき」に見た地方もあります。和名は、暮らしの暦でもありました。

同じ星の和名は、地域でどう違う?

同じ星の和名は、地域ごとに少しずつ違います。すばるは、北は北海道から南はトカラ列島まで、たくさんの地方名があります。

北尾浩一さんの報告と、富山県・長野県の資料から、すばるの呼び名を地域ごとに並べます。

すばるの呼び名伝わっていた地域資料にある説明
ウジラ北海道函館市泊町六連星がなまった名。一番先に出る
ムズナボシ北海道函館市大船町たくさん固まった星。タヌキ(ムズナ)のように出てくる
ムジラボシ北海道木古内町釜谷小さい星が6つ
ウズラボシ北海道鹿部町大岩・江差町出るとき「水が変わる」と言われた
シバリ青森県むつ市大畑町すばるがなまった名
スバリ千葉県富津市萩生漁具のスバリ(網が切れたときに引っかける道具)に似た星
スモル新潟県佐渡市姫津すばるがなまった名
ムツナリサン静岡県西伊豆町安良里(報告に説明なし)
イッショーボシ長野県諏訪地方野尻抱影の和名調べのきっかけになった報告
ソウダンボシ富山県黒部市愛本星が固まっている印象がよく表れた名
ブドウノホシサン富山市大山町(資料に説明なし)
カジボシ富山市四方・新湊北斗七星ではなく、すばるをこう呼んだ
スマル・スガル鹿児島県十島村口之島びっしり固まった、小さい星がいっぱい

北尾さんは、すばるの仲間の呼び名の南の端が、トカラ列島だと確かめています。

北海道の「ウジラ」「ムズナボシ」も、もとは「六連星」がなまった名前です。 言葉は変わっても、星の集まりを指す名前が北から南まで伝わっていました。

同じ名前が、違う星を指すこともある?

同じ和名が、地域によって別の星を指すこともあります。和名は、その土地の中で通じれば十分だったためと考えられます。

和名Aの地域で指す星Bの地域で指す星
カジボシ北斗七星(富山県魚津市)すばる(富山市四方・新湊)
マスボシペガスス座の四辺形(富山県射水市大島)三つ星・小三つ星とη星の並び(北海道江差町)
ミツボシオリオン座の三つ星(各地)アルデバラン(新潟県佐渡市米郷)
みなみのひとつ星フォーマルハウト(野尻抱影の命名)カノープス(一部の地方)

富山県の資料は、四方・新湊のカジボシを「カズボシ」がなまった名かもしれない、としています。

コウくん

和名の本を読むときは、「どの星を指すか」と「どこの呼び名か」をセットで見てください。名前だけで星を決めると、取り違えることがあります。

星の和名と中国名(漢名)の違いは?

星の和名は暮らしの中の呼び名で、中国名(漢名)は暦や天文の学問で使われた名前です。日本では、2つが重なって使われていました。

大阪市立科学館の嘉数次人さんが解説しています。中国の星座の仕組みは、日本でも江戸時代の終わりまで使われました。

すばるのような日本独自の呼び名がある一方で、天文学者は研究に中国の名前を使っていました。同じ星を、2つの言葉で呼んでいたことになります。

星中国名(漢名)和名
シリウス狼(天狼)青星・大星
カノープス老人(南極老人星・寿星)布良星・横着星など
ベテルギウス参宿四平家星
リゲル参宿七源氏星
アンタレス心宿二(大火)赤星など
スピカ角宿一アネサマボシ(富山県)、真珠星(近代の命名)
プレアデス星団昴すばる・六連星
北斗七星北斗四三の星・舵星・七つ星
ベガ・アルタイル織女・牽牛(河鼓)織姫星・彦星、メンタナバタ・オンタナバタ

この表の範囲では、中国名は天文の学問の名前、和名は暮らしの中の名前という違いが見えます。

カノープスは「寿星」と呼ばれ、見られれば寿命がのびるといわれた星です。七福神の寿老人も、この星を形にしたものとされます。

一方で房総半島の布良星は、海で亡くなった人の魂の星でした。同じ星でも、見る人の暮らしで意味が逆になります。

中国の星の見方は、オリオン座の神話の参宿の節でもくわしく紹介しています。

野尻抱影は、星の和名で何をした?

野尻抱影は、日本各地の星の和名を集め、本にまとめた人です。冥王星という日本語名を考えたことでも知られます。

野尻抱影(1885〜1977年)は、英文学者で、星についての文章を多く書きました。日本天文学会の発表によると、集めた和名の数は本ごとに増えました。

本出た年収めた和名の数
『日本の星』(研究社)1936年約400
『星の方言集』(中央公論社)1957年約700
『日本星名辞典』(東京堂出版)1973年約900

この仕事は、各地の天文好きの人たちの手紙に支えられていました。発表では、約100年前の市民科学の先がけと紹介されています。

和名調べのきっかけは、長野県諏訪地方からの報告でした。すばるを「イッショーボシ」、ヒアデス星団を「ツリガネボシ」と呼ぶ、という知らせです。

野尻抱影が名付けた星の名前はある?

野尻抱影は、スピカの「真珠星」を名付けました。フォーマルハウトの「あきぼし」「みなみのひとつ星」も、野尻抱影の命名です。

これらは、昔からの地方名ではありません。野尻抱影が、星の見え方から新しく考えた名前です。

和名の一覧には、この2種類が混ざって載っていることがあります。古い言い伝えの名か、近代の命名かを分けて読むと、和名の歴史が見えてきます。

野尻抱影のあとも、和名は集められている?

野尻抱影のあとも、星の和名の聞き取りは続いています。2009年にも、新しい呼び名が記録されました。

北尾浩一さんは、1978年に新潟県佐渡から聞き取りを始めました。2009年だけで、54か所で星の名前を記録しています。

その中には、佐渡市小木の「ホクサンボシ」のように、初めて記録された名前もありました。金北山の方から昇る星の名です。

北尾さんは、星の和名は過去のものではなく、いまも続く人と星の関わりだと書いています。

星の名前で、かっこいい和名は?

かっこいい星の和名として人気なのは、すばる・青星・寿星・真珠星・みなみのひとつ星などです。

響きで選ぶときは、由来も一緒に知っておくと安心です。

  • すばる(昴):プレアデス星団。「1つにまとまる」の意味。枕草子にも出てくる古い名
  • 六連星(むつらぼし):同じくプレアデス星団。星が連なる姿
  • 青星(あおぼし):シリウス。冬の夜空でいちばん明るい星
  • 寿星(じゅせい):カノープス。中国から来た、長生きの星の名
  • 釣鐘星(つりがねぼし):ヒアデス星団。V字を寺の鐘に見た名
  • 真珠星(しんじゅぼし):スピカ。野尻抱影の命名
  • みなみのひとつ星:フォーマルハウト。野尻抱影の命名

人の名前などに使うなら、古い地方名か近代の命名かを確かめておきましょう。 由来を説明しやすくなります。

金星など、惑星にも和名はある?

惑星にも和名があります。とくに明け方の金星には、漁や朝の暮らしと結びついた名前がたくさん記録されています。

金星の呼び名伝わっていた地域資料にある説明
ママタキボシ富山県氷見市見えたら、船の上で朝食の準備にかかった
メシタキボシ静岡県下田市須崎(報告に説明なし)
ヨアケボシ青森県むつ市大畑町夜明けの星
ミョードー北海道函館市豊崎町夜明けの少し前に出る星
シタボシ北海道木古内町釜谷恒星のようにまたたかない、と漁師が見分けていた
トビアガリ静岡県浜松市舞阪町(報告に説明なし)

富山県の資料は、明けの明星にちなむ名が多いことに注目しています。昔の人が早起きだったことがしのばれる、という指摘です。

木星には、富山県氷見市中田で「ヨナガボシ」という名が記録されています。

同じ星の、地域ごとの呼び名はどう違う?

星北海道・東北関東・東海・甲信北陸(富山県・新潟県)近畿・瀬戸内・四国中国名
すばるウジラ・ムズナボシ(函館市)、シバリ(むつ市)スバリ(富津市)、イッショーボシ(諏訪地方)ソウダンボシ(黒部市)、スモル(佐渡市)(記録を確認できず)昴
三つ星サンコウ(函館市・むつ市・八戸市)サンズイボシ(富津市)、サンボシ(横浜市)カラツキボシ(氷見市)、サオボシ(射水市)(記録を確認できず)参宿一・二・三
シリウスアオボシ(函館市)、サンコウアトボシ(八戸市)(記録を確認できず)アオミノホッサマ(黒部市)、アトボシ(佐渡市)(記録を確認できず)狼(天狼)
カノープス(記録を確認できず)メラボシ(館山市)(記録を確認できず)横着星(瀬戸内)、源助星(奈良)、にじり星(徳島)老人
北極星(記録を確認できず)ネノホシ(蒲郡市)、キタノホシ(吉良町)ネノホシ(朝日町)、メアテボシ(入善町)(記録を確認できず)(記録を確認できず)
北斗七星(記録を確認できず)ナナツボシ(尾鷲市)カジボシ(魚津市)、キタノカジボシ(氷見市)(記録を確認できず)北斗
明けの金星ミョードー(函館市)、ヨアケボシ(むつ市)メシタキボシ(下田市)、トビアガリ(浜松市)ママタキボシ(氷見市)(記録を確認できず)(この記事では扱わない)

表のとおり、同じ星でも、北海道から四国までまったく違う名前で呼ばれていました。

「記録を確認できず」は、この記事を書くときに出典を確かめられなかったところです。呼び名が無かった、という意味ではありません。

この記事で集めた呼び名は、海沿いの土地のものが多くなりました。 夜の海で時刻や方角を知る必要があったためと考えられます。

もう1つの理由は、資料の多くが漁師からの聞き取りだからです。農村の呼び名も、各地の資料に残っています。

星の和名を思い出しながら夜空を見るには?

星の和名を楽しむには、季節ごとに1つずつ、目立つ星から探すのが近道です。

  • 冬:すばる(六連星)を頭の上あたりに。シリウス(青星)を南の空に
  • 春:北斗七星(四三の星)を北の高い空に。ひしゃくの柄の先に麦星
  • 夏:織姫星と彦星を東の空に。南の低い空にさそり座の魚釣り星
  • 秋:カシオペヤ座(碇星)を北の空に。南の低い空にみなみのひとつ星
  • 一年中:北斗七星やカシオペヤ座をたどって、北の空の子の星(北極星)
コウくん

すばるは、目のいい人なら6つ前後の星に見えます。六連星の名前のとおりか、数えてみてください。

星の和名でよくある質問は?

星の和名一覧はどこで見られる?

この記事の季節ごとの表で、主な星・星団の和名を見られます。くわしく調べるなら、野尻抱影の『日本星名辞典』が約900の呼び名を収めています。

プレアデス星団の和名は?

「すばる(昴)」です。六連星(むつらぼし)・羽子板星とも呼ばれ、北海道ではムズナボシなどの名も記録されています。

北斗七星の和名は?

「四三の星(しそうのほし)」「舵星(かじぼし)」「七つ星」などです。四三の星は、3と4の目を出した2つのさいころに見立てた名前です。

シリウスの和名は?

「青星(あおぼし)」「大星(おおぼし)」です。明るく、青白く見えることから付いた名前です。

彦星と織姫星の和名は?

彦星はアルタイル、織姫星はベガのことです。富山県ではオンタナバタ・メンタナバタ、2つ合わせてタナバタホッサマとも呼ばれました。

星の和名と中国名(漢名)の違いは?

和名は農村や漁村の暮らしで生まれた呼び名です。中国名は暦や天文の学問で使われた名前で、日本の天文学者も江戸時代まで使いました。

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