星座の神話ST-03
双子座の神話をわかりやすく:カストルとポルックスが不死を分け合う話、金星・銀星の和名、中国の北河
双子座の神話は、兄カストルを亡くしたポルックスが、自分の不死を兄と分け合う話です。父の名や兄の死に方は、古典によって違います。
あらすじ
この記事では、次の14項目を順に説明します。
- 結論:双子座の神話はどんな話?
- 双子座の神話を子ども向けに簡単に言うと?
- 双子座の神話で、カストルとポルックスはどっちが兄?
- 双子座の神話で、カストルはなぜ死んだ?
- 双子座の神話で、ポルックスは不死をどう分け合った?
- ディオスクロイとは? 船乗りの守り神とアルゴ船の話は?
ほか8項目は下の目次から。
この記事の内容(14項目)
- 結論:双子座の神話はどんな話?
- 双子座の神話を子ども向けに簡単に言うと?
双子座の神話で、カストルとポルックスはどっちが兄?1
双子座の神話で、カストルはなぜ死んだ?1
双子座の神話で、ポルックスは不死をどう分け合った?1
ディオスクロイとは? 船乗りの守り神とアルゴ船の話は?3
- 双子座の星の名前と意味は? カストルとポルックスの違いは?
双子座の和名は? 金星・銀星とは?2
- 双子座は中国で何と呼ばれる? 井宿・北河とは?
ほかの文化では、双子座の2つの星をどう見た?3
- 同じ星の、地域ごとの呼び名はどう違う?
- 双子座の見つけ方は? 冬の大三角・冬のダイヤモンドとの位置は?
- 出典
双子座の神話は、仲のよい兄弟カストルとポルックスの話です。冬の夜空に、明るい2つの星が並んで光ります。
ただ、2人の父親は1人ではありません。2人ともゼウスの子とする話もあれば、片方だけがゼウスの子とする話もあります。
兄カストルの死に方も、古典によって違います。そして日本や中国、オーストラリアの人々も、この2つの星に別の名と物語を与えました。
この記事で分かることは、次のとおりです。
- 双子座の神話のあらすじ(子ども向けの短い版も)
- カストルとポルックスはどっちが兄か、親は誰か
- カストルが死んだわけと、不死を分け合う話の古典ごとの違い
- ディオスクロイ、アルゴ船、船乗りの守り神の話
- 金星・銀星などの和名と、中国の北河・井宿
- 冬の大三角・冬のダイヤモンドを使った見つけ方
ポイントはここです。双子座の神話は、2つの星が「いつも並んでいる」ことを、兄弟の約束として語った話です。
結論:双子座の神話はどんな話?
双子座の神話は、兄カストルが戦いで死に、弟ポルックスが自分の不死を兄と分け合った話です。
2人の母はスパルタの王妃レダです。古い話の多くで、ポルックスは大神ゼウスの子とされます。
ゼウスの子は死なない体を持ちます。一方、カストルは人間の王テュンダレオスの子で、死ぬ運命でした。
カストルが戦いで倒れると、ポルックスはゼウスに頼みました。兄と一緒でないなら、不死はいらない、と。
ゼウスは願いを聞き入れました。2人は1日ごとに、神々の住む天と、地下の世界とを行き来することになりました。
そして2人は、並んで光る星座になったと伝わっています。
古典によって違うのは、父親の名と、カストルが死んだわけです。 下の節で、どの古典の話かを表で並べます。
冬の夜、明るい2つの星が並んでいたら、そこが双子の頭です。オレンジがかったほうがポルックスです。
双子座の神話を子ども向けに簡単に言うと?
双子座の神話を子ども向けに言うと、「死んでもはなれたくなかった、なかよし兄弟の話」です。
むかし、ギリシャのスパルタに、カストルとポルックスという兄弟がいました。2人はけんかをせず、何をするにも相談して決めました。
兄のカストルは馬に乗るのが得意でした。弟のポルックスは、ボクシングの名人でした。
弟のポルックスは神さまの王ゼウスの子どもで、死なない体を持っていました。兄のカストルは、ふつうの人間でした。
ある日、カストルは戦いで死んでしまいました。ポルックスは泣いて、ゼウスにお願いしました。
「ぼくだけ死なないなんていやです。兄さんと半分ずつにしてください」
ゼウスは2人を夜空の星にしました。いまも2つの星は、となりどうしで光っています。
子どもと見るなら、まず冬の夜に2つ並んだ明るい星を探してみてください。「どっちが兄さんかな」と話すと覚えやすいです。
双子座の神話で、カストルとポルックスはどっちが兄?
双子座の神話の日本の解説では、暗いほうのカストルが兄、明るいほうのポルックスが弟とされます。
岐阜市科学館の「星空のたより」も同じです。白い星が兄カストル、黄色の星が弟ポルックスと紹介しています。
一方、今回見た古典の英訳には、どちらが先に生まれたかをはっきり書いたものはありませんでした。
2人の名前の呼び方も、いくつかあります。
- カストル:ギリシャ語でカストール
- ポルックス:ギリシャ語ではポリュデウケス。ポルックスはラテン語の形
- 2人まとめて:ディオスクロイ(ゼウスの息子たち)、テュンダリダイ(テュンダレオスの息子たち)
2つのまとめ名には、父親の話の食い違いが表れています。
双子座の神話で、2人の父はゼウス? テュンダレオス?
双子座の神話では、2人の父をどう語るかが古典によって3通りに分かれます。
母のレダは、白鳥の姿のゼウスと結ばれたと語られます。同じころ、夫のテュンダレオス王とも結ばれました。
ヒュギヌスの『神話集』77では、レダはゼウスとの間にポルックスとヘレネを産みました。テュンダレオスとの間には、カストルとクリュタイムネストラを産んだとされます。
| 話の形 | 父親 | 出てくる古典 |
|---|---|---|
| 2人ともゼウスの子 | ゼウス | ヘシオドス『名婦列伝』断片(ピンダロスの古注が引く)、ヒュギヌス『神話集』14 |
| ポルックスだけがゼウスの子 | ポルックス=ゼウス、カストル=テュンダレオス | ピンダロス『ネメア祝勝歌』10、ヒュギヌス『神話集』77・80 |
| 2人ともテュンダレオスの子 | テュンダレオス | ホメロス『オデュッセイア』11巻(レダがテュンダレオスに2人の子を産んだ) |
星座の伝承にくわしいイアン・リドパスさんは、2番目を最も広く受け入れられた形としています。ポルックスとヘレネは不死、カストルとクリュタイムネストラは死すべき人間、という形です。
白鳥のゼウスは、はくちょう座の話にもつながります。冬にふたご座、夏にはくちょう座と、同じ物語が季節をまたいで空にあります。
双子座の神話で、カストルはなぜ死んだ?
双子座の神話でカストルが死んだのは、いとこの兄弟イダスとリュンケウスとの争いのためです。争いのわけは、牛の話と花嫁の話に分かれます。
イダスとリュンケウスも、双子の兄弟でした。2組の兄弟は、アルゴ船の旅の仲間でもあったと伝わっています。
| 話の形 | 争いのわけ | カストルを倒した人 | 出てくる古典 |
|---|---|---|---|
| 牛の話 | イダスたちの牛を盗もうとした | イダス | 『キュプリア』断片(プロクロスの要約)、ピンダロス『ネメア祝勝歌』10、アポロドロス『ビブリオテーケー』3巻 |
| 花嫁の話 | イダスたちの婚約者フォイベとヒラエイラをさらった | リュンケウス(剣で胸を刺した) | オウィディウス『祭暦』5巻 |
| 墓の話 | リュンケウスを倒したあと、イダスが弟の墓を建てるのをじゃました | イダス(剣でももを刺した、または墓石を倒した) | ヒュギヌス『神話集』80 |
| 戦争の話 | スパルタとアテナイの戦い、またはイダスたちのスパルタ攻め | (書かれていない) | ヒュギヌス『天文詩』2.22 |
アポロドロスの話では、待ち伏せしていたカストルをリュンケウスが見つけ、イダスが討ちました。ポルックスはリュンケウスを槍で倒します。
イダスが投げた石で、ポルックスは気を失いました。そこへゼウスが雷を落とし、イダスを打ったとされます。
どの話でも、ポルックスは兄の仇を討ち、ゼウスの雷が争いを終わらせます。 違うのは、争いのきっかけです。
オウィディウスの『祭暦』では、どう語られる?
双子座の神話をオウィディウスの『祭暦』で読むと、花嫁をめぐる争いとして語られます。
双子は、レウキッポスの娘フォイベとその姉妹をさらいました。2人はイダスとリュンケウスの婚約者でした。
双子は逃げ切ることもできました。けれども、逃げて勝つのは恥だと考え、アフィドナという場所で戦いました。
リュンケウスの剣がカストルの胸を貫きます。ポルックスはすぐにリュンケウスの首元を槍で突きました。
本によってカストルを倒した人が違っても、間違いと決めつけなくて大丈夫です。どの古典の話かを見比べると、違いそのものが面白くなります。
双子座の神話で、ポルックスは不死をどう分け合った?
双子座の神話でポルックスは、天の住まいを兄と半分ずつにすることを選びました。2人は1日ごとに、天と地下を行き来します。
ピンダロスの『ネメア祝勝歌』10は、この場面をくわしく詠んでいます。ポルックスは、息の絶えかけた兄のもとへ駆け戻りました。
ポルックスは泣きながら、兄と一緒に死なせてほしいとゼウスに願います。ゼウスは2つの道を示しました。
- 1人で死なずに、オリュンポスの神々のそばで暮らす
- 兄とすべてを分け合い、半分の日を地下で、半分の日を天で過ごす
ポルックスは迷わず2つ目を選んだ、と詠まれています。不死を半分手放してでも、兄と同じ運命を選んだわけです。
オウィディウスの『祭暦』では、ポルックスの言葉がこう語られます。自分のための天を2人で分けてほしい、半分の贈り物は全部にまさる、と。
1日おきに天と地下で暮らす話は、どの古典に出てくる?
双子座の神話の「1日おき」の話は、ホメロスの『オデュッセイア』にすでに出てきます。
オデュッセウスが冥界で見た話の中で、2人は大地に覆われながら生きている、と語られます。1日ごとに生き、1日ごとに死んでいる、とされます。
ホメロスの『イリアス』3巻では、ヘレネが兄たちの姿をトロイアの城から探します。けれども2人はすでに、故郷の大地に眠っていました。
| 古典 | 不死の分け方 |
|---|---|
| ホメロス『オデュッセイア』11巻 | 2人とも、1日ごとに生き、1日ごとに死ぬ |
| ピンダロス『ネメア祝勝歌』10 | 1日はゼウスのそば、1日はテラプナイの地下で過ごす |
| アポロドロス『ビブリオテーケー』3巻 | 1日おきに、神々の間と人間の間で過ごす |
| ヒュギヌス『天文詩』2.22 | ポルックスが命の半分を兄に与え、2人は1日おきに光る(ホメロスの説として) |
| オウィディウス『祭暦』5巻 | 天を2人で分け、交代で天にいる |
古代の神話をまとめた Theoi Project の解説は、こう推測しています。天と地下の行き来は、ふたご座が1年の半分ほどしか見えないことを映すのかもしれない、と。
天と地下を行き来する話は、星が季節で見えたり見えなくなったりすることとも重ねて読めます。夏の夜にふたご座が見えないのは、2人が地下にいるから。そう想像して見るのも楽しいです。
ディオスクロイとは? 船乗りの守り神とアルゴ船の話は?
ディオスクロイは、カストルとポルックスをまとめた呼び名で「ゼウスの息子たち」の意味です。古代のギリシャやローマでは、嵐の海で船乗りを助ける神として祈られました。
2人はアルゴ船の英雄イアソンの旅にも加わった、と伝わっています。金の羊の毛皮を探す旅です。
リドパスさんの紹介によると、アポロニオスの『アルゴナウティカ』にこんな場面があります。船が寄った土地の王アミュコスが、ボクシングの勝負を挑んできました。
ポルックスは勝負を受け、ひと突きでアミュコスを倒しました。ボクシングの名人という設定は、この話にもつながります。
双子座の神話で、2人はなぜ船乗りの守り神になった?
双子座の神話では、アルゴ船を嵐から救ったことがきっかけとして語られます。
シケリアのディオドロスは、アルゴ船が大嵐にあった話を伝えています。オルフェウスがサモトラケの神々に祈ると風がやみ、2つの星が双子の頭の上に落ちてきました。
ディオドロスによると、それ以来、嵐にあった船乗りは2つの星を双子の助けと考えました。
ヒュギヌスの『天文詩』2.22は、別の形で説明します。海の神ポセイドンが、2人に乗る馬と、難破した人を救う力を与えた、と。
セントエルモの火と、双子座の関係は?
嵐の夜に帆柱の先が光る「セントエルモの火」を、古代の船乗りは双子の現れと考えました。
セントエルモの火は、嵐のときに帆柱などの先が青白く光る現象です。空の電気によって起こります。
ローマのプリニウスは『博物誌』で、こう書いています。光が2つなら航海は無事に終わるしるしで、カストルとポルックスと呼ばれる、と。
1つだけの光はヘレナと呼ばれ、悪いことの前ぶれとされました。2つ並んだ光は、2つ並んだ星と同じく「双子がそばにいる」しるしでした。
双子座はアポロンとヘラクレスという説もある?
双子座の2人をアポロンとヘラクレスとする説も、古くから伝わっています。
紀元前3世紀の詩人アラトスは、星座をただ「双子」と呼び、誰かは書いていません。その後エラトステネスが、ディオスクロイだとしました。
ヒュギヌスは、別の説として、アポロンとヘラクレスを挙げています。2人ともゼウスの子ですが、双子ではありません。
フラムスティードの星図(1729年)では、片方が竪琴と矢、もう片方がこん棒を持っています。リドパスさんの紹介です。
竪琴と矢はアポロン、こん棒はヘラクレスの持ち物です。星図の絵にも、この説が残っているわけです。
双子座の星の名前と意味は? カストルとポルックスの違いは?
| 星の名前 | 符号 | 明るさ(等級) | 体の場所 | 名前の意味 | 日本の呼び名 | 中国の呼び名 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ポルックス | β | 1.1 | 弟ポルックスの頭 | 双子の1人ポリュデウケスのラテン語名 | 金星(きんぼし)。2星合わせてフタツボシ(富山県) | 北河三 |
| カストル | α | 1.6(連星をまとめた明るさ) | 兄カストルの頭 | 双子の1人カストルの名 | 銀星(ぎんぼし)。2星合わせてフタツボシ(富山県) | 北河二 |
| アルヘナ | γ | 1.9 | 双子の脚 | (この記事では扱わない) | (記録を確認できず) | 井宿の星 |
| テジャト | μ | 2.9 | 双子の脚 | (この記事では扱わない) | (記録を確認できず) | 井宿の星 |
| メブスタ | ε | 3.0 | 双子の脚 | (この記事では扱わない) | (記録を確認できず) | 井宿の星 |
| プロプス | η | 3.3(変光する) | カストルの前に出した足 | 前に出した足(ギリシャ語) | (記録を確認できず) | 鉞(まさかり) |
| ふたご座ξ星 | ξ | 3.4 | 双子の脚 | (この記事では扱わない) | (記録を確認できず) | 井宿の星 |
| メクブダ | ζ | 3.8(変光する) | 双子の脚 | (この記事では扱わない) | (記録を確認できず) | 井宿の星 |
出典: SIMBAD(ストラスブール天文データセンター)の V 等級
双子座でいちばん明るい星は、弟のポルックスです。兄のカストルより少し暗く見えます。
カストルには、明るい星の印であるα(アルファ)が付いています。ポルックスはβ(ベータ)です。
リドパスさんの説明では、記号を付けたバイエルが、明るさではなく位置の順に付けたためです。
色にも違いがあります。ポルックスは黄色からオレンジ、カストルは白に見えます。
- ポルックス:1等星。黄色っぽい。地球から約34光年
- カストル:2等星。白っぽい。地球から約51光年
双子の星ですが、本当の兄弟の星ではありません。 地球からの距離が違い、たまたま同じ方向に並んで見えているだけです。
ほかの星の名前では、プロプスが「前に出した足」の意味です。カストルの、前に踏み出した足の先にあります。
双子座の和名は? 金星・銀星とは?
双子座の2つの星は、色の違いから「金星(きんぼし)」「銀星(ぎんぼし)」と呼ばれました。黄色いポルックスが金星、白いカストルが銀星です。
岐阜市科学館の「星空のたより」2026年2月号が、昔からの呼び名として紹介しています。ただし、どの地方の呼び名かは書かれていません。
夜空の「金星(きんせい)」と同じ字ですが、読み方も指す星も違います。惑星の金星は、宵の明星・明けの明星です。
双子座の和名で、地方の呼び名はある?
双子座の2つの星は、富山県の富山市四方や新湊で「フタツボシ」と呼ばれていました。
増田正之さんの『越中の星ものがたり』をもとにした、富山県の理科教育の資料にある呼び名です。
| 呼び名 | 指す星 | 伝わっていた地域 | 見立て |
|---|---|---|---|
| 金星(きんぼし) | ポルックス | (資料に地域の記載なし) | 黄色い色を金に |
| 銀星(ぎんぼし) | カストル | (資料に地域の記載なし) | 白い色を銀に |
| フタツボシ(二つ星) | カストルとポルックス | 富山県富山市四方・新湊 | 並んだ2つの星 |
ギリシャでは兄弟、日本では金と銀。 どちらも、2つの星を「対になるもの」と見ている点は同じです。
ほかの季節の星の和名は、星の和名一覧で読めます。
かに目・猫の目という和名は、本当にある?
双子座の和名に「かに目」「猫の目」を挙げる解説もあります。ただ、今回は科学館や研究の資料で確かめられませんでした。
2つの星が目のように並ぶので、目にたとえる呼び名があっても不思議ではありません。ただ、地域や出どころが分からないため、この記事の表には入れていません。
2つの星の色の差は、街なかでも目で分かります。金と銀に見えるか、自分の目で確かめてみてください。
双子座は中国で何と呼ばれる? 井宿・北河とは?
双子座の2つの明るい星は、中国では「北河」という星座の星です。カストルは「北河二」、ポルックスは「北河三」と呼ばれます。
双子の脚のあたりの星は、二十八宿の1つ「井宿」に入ります。井は井戸の意味です。
国立天文台の暦の解説では、井宿は南の「朱雀」の7つの宿の最初です。すぐ西どなりが、オリオン座の参宿です。
| 中国の星座 | 意味 | ふたご座の星 | メモ |
|---|---|---|---|
| 井宿 | 井戸 | 脚のλ・ζ・36番・ε・ξ・γ・ν・μの8星 | 二十八宿の22番目。いちばん幅の広い宿 |
| 北河 | 北の川 | カストル・ポルックス・ρ | こいぬ座の南河と、北と南の門のように対になる |
| 鉞 | まさかり | η(プロプス) | 悪い者を罰する斧とされる |
| 五諸侯 | 5人の諸侯 | θからκあたりの5星 | 皇帝に助言する者たち |
リドパスさんによると、井宿の8星は、漢字の「井」に似た形に並びます。井宿は幅が33度もあり、28の宿でいちばん広い宿です。
北河と南河は、太陽の通り道をはさんで北と南にあります。そのため、関所の門や見張りとも見られました。
ギリシャで双子の頭だった2つの星は、中国では川のほとりの星でした。 一方、双子の脚は井戸になっていました。
ほかの文化では、双子座の2つの星をどう見た?
双子座の2つの星は、世界の多くの文化で「2人の人物」と見られてきました。オーストラリアや北アメリカにも、2人の話が伝わっています。
バビロニアでも、2つの星は双子だった?
双子座の2つの星は、ギリシャより古いバビロニアでも、双子の神と見られていました。
国際天文学連合の天文教育室(OAE)の用語集は、こう説明しています。ふたご座の名は2つの明るい星から来ていて、バビロニアの神話では双子の小さな神だった、と。
オーストラリア先住民は、2つの星を誰と見た?
オーストラリア先住民の伝承でも、カストルとポルックスは2人の男として語られます。
ビクトリア州西部のブーロンの人々は、カストルを「ユリー」と呼びました。ポルックスは「ワンジェル」です。2人は若い狩人です。
2人はカンガルーを追いかけ、「大きな暑さ」の始まりに仕留める、と伝わります。大きな暑さは夏のことです。1858年のスタンブリッジの記録です。
タスマニアにも、2人の男の話があります。東海岸のオイスターベイの人の話では、カストルとポルックスは火を作った2人の男です。
2人は山の上から、星のように火を投げた、と記録されています(ミリガン、1859年)。この2つの話は、ガンテフォールトさん・ハマカーさんらの論文が紹介しています。
北アメリカのブラックフットの話とは?
カナダのカルガリー大学の天文台は、ふたご座の項でブラックフットの話を紹介しています。
賢いカラスという名の男に、2人の息子がいました。兄弟は幼いころに母を失いました。
兄弟はのちに、バッファローの肉で母を生き返らせたと語られます。大人になると、不思議な力を持ちました。
やがて兄は白い衣とワシの羽で空へ昇り、弟は木の枝に運ばれて空へ上がりました。2人は双子の星になった、と語られます。
ギリシャ、オーストラリア、北アメリカで、同じ2つの星が「2人の若者」になっています。 並んだ明るい星は、どこでも2人の人物に見えたのかもしれません。
同じ星の、地域ごとの呼び名はどう違う?
| 星 | ギリシャ・ローマ | 日本(和名) | 中国 | オーストラリア(ブーロン) | 北アメリカ(ブラックフット) |
|---|---|---|---|---|---|
| ポルックス | 弟ポルックス(ポリュデウケス)の頭。ゼウスの子とされることが多い | 金星(きんぼし)。2星でフタツボシ(富山市四方・新湊) | 北河三 | ワンジェル(若い狩人) | 双子の星の1つ(どちらがどちらかは記録を確認できず) |
| カストル | 兄カストルの頭。テュンダレオスの子とされることが多い | 銀星(ぎんぼし) | 北河二 | ユリー(若い狩人) | 双子の星の1つ(どちらがどちらかは記録を確認できず) |
| 脚の星(γ・μ・εなど) | 双子の脚 | (記録を確認できず) | 井宿(井戸) | (記録を確認できず) | (記録を確認できず) |
| プロプス(η) | カストルの前に出した足 | (記録を確認できず) | 鉞(まさかり) | (記録を確認できず) | (記録を確認できず) |
表のとおり、同じ2つの星が、兄弟・金と銀・川の星・狩人に見立てられています。
「記録を確認できず」は、この記事を書くときに出典を確かめられなかったところです。呼び名が無かった、という意味ではありません。
アイヌの呼び名も、今回の資料では確かめられませんでした。
双子座の見つけ方は? 冬の大三角・冬のダイヤモンドとの位置は?
双子座は、冬の大三角のすぐ北にあります。冬のダイヤモンドの1つの角がポルックスです。
日本では、12月の宵に東の空から昇ります。2月の夜8時ごろには、頭の真上あたりに来ます。
まず冬の大三角を探しましょう。オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンの3つです。
ふたご座の星は、冬の大三角には入りません。プロキオンとベテルギウスの北のほうに、明るい星が2つ並んでいます。それがポルックスとカストルです。
冬のダイヤモンドは、6つの1等星を結んだ大きな六角形です。さいたま市青少年宇宙科学館の解説では、次の星を結びます。
- ふたご座のポルックス
- ぎょしゃ座のカペラ
- おうし座のアルデバラン
- オリオン座のリゲル
- おおいぬ座のシリウス
- こいぬ座のプロキオン
2つの星からオリオン座の方向へ、暗い星が2列にのびています。これが双子の体と脚です。
- 12月:ふたご座流星群。流れ星が飛び出す点は、カストルのあたり
- オリオン座:双子の脚の先の、すぐ西どなり
- さそり座:冬の空には無い。夏の夜に南の空へ探す
オリオン座の神話はオリオン座の神話で読めます。
冬のダイヤモンドをたどるときは、ポルックスのすぐ横にカストルが並びます。2つ並んだ星を見つければ、そこが六角形の角です。
双子座の神話でよくある質問は?
双子座の神話を子ども向けに言うと?
なかよし兄弟の兄が死に、死なない体を持つ弟が「兄さんと半分ずつに」とゼウスに頼んだ話です。2人は並んだ星になりました。
カストルとポルックスはどっちが兄?
日本の解説では、暗い白い星のカストルが兄、明るい黄色の星のポルックスが弟とされます。古典の英訳では、生まれた順ははっきりしません。
カストルとポルックスの親は誰?
母はスパルタの王妃レダです。父は、ポルックスがゼウス、カストルがテュンダレオス王とする話がよく知られています。
カストルとポルックスの和名は?
色の違いから、ポルックスが金星(きんぼし)、カストルが銀星(ぎんぼし)と呼ばれました。富山県では2つ合わせてフタツボシです。
双子座の中国名は?
カストルが北河二、ポルックスが北河三です。双子の脚のあたりは、二十八宿の井宿に入ります。
双子座はいつ見える?
日本では冬の夜に見やすくなります。12月の宵に東から昇り、2月の夜8時ごろには頭の真上あたりに来ます。
出典
- Theoi Project「Dioskouroi」(ヘシオドス断片・『キュプリア』断片・ピンダロス『ネメア祝勝歌』10・アポロドロス『ビブリオテーケー』3巻・ヒュギヌス『神話集』14・77・80と『天文詩』2.22・オウィディウス『祭暦』5巻・ディオドロス4.43の英訳)
- Theoi Project:ホメロス『オデュッセイア』11巻の英訳(レダとテュンダレオスの2人の子、1日おきの生と死)
- Theoi Project:ホメロス『イリアス』3巻の英訳(ヘレネが兄たちを探す場面)
- Ian Ridpath「Star Tales: Gemini」(父親の話、アルゴ船とアミュコス、船乗りの守り神とプリニウス、アポロンとヘラクレス説、星の名前、中国の井宿・北河・鉞・五諸侯)
- 岐阜市科学館「星空のたより」2026年2月号(ふたご座:金星と銀星、兄カストル・弟ポルックス)
- とやまの星の和名(増田正之『越中の星ものがたり』より。富山県の理科教育の資料)
- 国立天文台 暦計算室「暦Wiki:二十八宿」
- IAU 天文教育室(OAE)用語集「雙子座」(中国語。北河二・北河三、バビロニアの双子の神)
- Gantevoort, Hamacher, Lischick「Reconstructing the Star Knowledge of Aboriginal Tasmanians」(Journal of Astronomical History and Heritage 19巻3号、2016年。タスマニアの火を作った2人、ブーロンのユリーとワンジェル)
- カルガリー大学ロスニー天文台「Gemini and Indigenous Skylore」(ブラックフットの双子の星の話)
- さいたま市青少年宇宙科学館「2月の星空」(2024年。冬の大三角と冬のダイヤモンド)
- さいたま市青少年宇宙科学館「12月の星空」(2024年。ふたご座流星群の放射点)
- SIMBAD(ストラスブール天文データセンター):星の明るさ(V 等級)と星の固有名