星座の神話ST-02
さそり座の神話をわかりやすく:オリオン座との関係、釣り星・赤星の和名、中国の心宿
さそり座の神話は、狩人オリオンを刺したさそりの話です。送った神は古典によって違い、日本や南の島では同じ星を釣り針に見ました。
あらすじ
この記事では、次の13項目を順に説明します。
- 結論:さそり座の神話はどんな話?
- さそり座の神話を子ども向けに簡単に言うと?
- さそり座の神話でさそりを送ったのは誰?
- さそり座とオリオン座の関係は? 同時に見えないのはなぜ?
- さそり座の神話は、ほかにどんな話がある?
- さそり座の星の名前と意味は? アンタレスの意味は?
ほか7項目は下の目次から。
この記事の内容(13項目)
- 結論:さそり座の神話はどんな話?
- さそり座の神話を子ども向けに簡単に言うと?
さそり座の神話でさそりを送ったのは誰?2
- さそり座とオリオン座の関係は? 同時に見えないのはなぜ?
さそり座の神話は、ほかにどんな話がある?3
- さそり座の星の名前と意味は? アンタレスの意味は?
さそり座の和名は? 釣り星・赤星とは?2
さそり座は中国で何と呼ばれる? 心宿・大火とは?3
ポリネシアでは、さそり座はマウイの釣り針?3
- 同じ星の、地域ごとの呼び名はどう違う?
- さそり座の神話を思い出しながら星を見るには?
- 出典
さそり座の神話は、ギリシャの狩人オリオンを刺し殺したさそりの話です。夏の南の空に、赤いアンタレスとS字の尾が目立ちます。
ただ、さそりを送った神は1人ではありません。大地の女神とする話も、狩りの女神アルテミスとする話もあります。
さらに、同じ星を日本の漁師や南の島の人は、魚を釣る針に見ていました。中国では、空の竜の心臓でした。
この記事で分かることは、次のとおりです。
- さそり座の神話のあらすじ(子ども向けの短い版も)
- さそりを送ったのは誰か、古典ごとの違い
- オリオン座とさそり座が同時に見えない理由
- パエトンの話、てんびん座との関係
- アンタレスの意味と、魚釣り星・赤星などの和名
- 中国の心宿・大火と、マオリやハワイの「マウイの釣り針」
ポイントはここです。さそり座の神話は、オリオン座の神話を裏側から読むと筋がつながります。
結論:さそり座の神話はどんな話?
さそり座の神話は、いばった狩人オリオンを1匹のさそりが刺し、神々が両方を星にした話です。
さそりを送った神とわけは、古典によって違います。大きく分けると、次の2つの系統があります。
- 大地の女神(ギリシャ名ガイア)が送った話:オリオンが「地上の獣をすべて狩る」と言った
- 女神アルテミスが送った話:オリオンがアルテミスの衣をつかんだ
どちらの話でも、さそりは星座になります。オリオンも空に上げられました。
古い文献で、さそりを送ったのは大地の女神かアルテミスです。 日本の解説ではヘラとする形もよく見かけます。
さそり座の話は、オリオン座の話とセットです。冬にオリオン座、夏にさそり座を見ると、物語が1年でつながります。
さそり座の神話を子ども向けに簡単に言うと?
さそり座の神話を子ども向けに言うと、「小さなさそりが、大きな狩人をやっつけた話」です。
むかし、ギリシャにオリオンという大男の狩人がいました。オリオンは「この世の動物を、ぜんぶ狩ってみせる」といばりました。
それを聞いた大地の女神は怒りました。そこで、地面から1匹のさそりを出しました。
さそりはオリオンをちくりと刺しました。強いオリオンも、さそりの毒にはかないませんでした。
神さまの王ゼウスは、さそりもオリオンも夜空の星にしました。
いまでも、さそり座が東から昇ると、オリオン座は西へ沈みます。オリオンがさそりから逃げている、と言われています。
小学生に話すなら、まず夏の夜に赤いアンタレスを見つけてみてください。そこがさそりの心臓です。
さそり座の神話でさそりを送ったのは誰?
さそり座の神話でさそりを送ったのは、古い文献では大地の女神か、女神アルテミスです。
大地の女神の話は、いちばん古くから伝わる形の1つです。オリオンがクレタ島で狩りをして「地上の獣をすべて殺す」と言いました。
怒った大地がさそりを出し、オリオンは刺されて死にました。この話はヘシオドスのものとして、エラトステネスの名で伝わる星座の本に引かれています。
ローマのヒュギヌスも『天文詩』で、大地がさそりを送ったと書いています。ゼウスは、さそりを戒めとして星にしたとされます。
アルテミスの話は、詩人アラトスの『ファイノメナ』に出てきます。キオス島で、オリオンがアルテミスの衣をつかみました。
女神はさそりを呼び起こし、さそりはオリオンを刺して死なせた、と詠まれています。
星座の伝承にくわしいイアン・リドパスさんは、こう整理しています。エラトステネスもヒュギヌスも、2つの話を両方とも伝えています。
| 話の形 | さそりを送った神 | わけ | 場所 | 出てくる古典 |
|---|---|---|---|---|
| 大地の話 | 大地の女神(ガイア/テルス) | 「地上の獣をすべて殺す」と言った | クレタ島 | ヘシオドス(エラトステネスの星座の本が引く)、ヒュギヌス『天文詩』2.26 |
| アルテミスの話 | アルテミス | アルテミスの衣をつかんだ | キオス島 | アラトス『ファイノメナ』、エラトステネス(さそり座の項) |
| 女神を守った話 | 大地の女神 | 女神レトを狙ったさそりの前に、オリオンが立ちはだかった | (書かれていない) | オウィディウス『祭暦』5巻 |
オウィディウスの話では、オリオンは女神を守った?
さそり座の神話のうち、オウィディウスの『祭暦』では、オリオンは女神を守る側として語られます。
この話でも、オリオンは「勝てない獣はいない」といばります。大地はさそりを放ちました。
ところが、さそりが狙ったのはアルテミスの母、女神レトでした。オリオンはその前に立ちはだかりました。
女神レトは、そのほうびとしてオリオンを星の中に置いたと書かれています。同じさそりでも、オリオンが悪者にならない形もあるわけです。
さそり座の神話でさそりを送ったのはヘラ?
さそり座の神話で、さそりを送ったのを女神ヘラとする話は、日本の解説でよく見かけます。
古代の文献の英訳をまとめた Theoi Project を見ました。さそりの項に並ぶ古典の中に、ヘラの名はありません。
日本の天体観測施設の解説にも、ヘラとするものがあります。ヘラの形は、のちの語り直しで広まった可能性があります。
本によって神さまの名前が違っていても、間違いと決めつけなくて大丈夫です。どの古典の話かを見比べると、違いそのものが面白くなります。
さそり座とオリオン座の関係は? 同時に見えないのはなぜ?
さそり座とオリオン座は空のほぼ反対側にあり、片方が昇ると、もう片方が沈みます。
日本から見ると、オリオン座は冬の夜の星座です。さそり座は夏の夜の星座です。
2つの星座は、空を一回りする円の上で、半分近く離れています。そのため、同じ時刻に両方を高く見ることはまずありません。
アラトスは、さそりが東から昇ると、オリオンは西の果てへ逃げると詠みました。ヒュギヌスも、さそりが昇るとオリオンが沈むように置かれた、と書いています。
神話は、空で起きていることを物語にして伝えています。 リドパスさんも、この話の始まりは空そのものにあるのかもしれない、と述べています。
オリオンの側から見た話は、オリオン座の神話でまとめています。
さそり座の神話は、ほかにどんな話がある?
さそり座の神話には、パエトンの暴走の話もあります。はさみがてんびん座になった話もあります。
パエトンの暴走とさそりの話とは?
さそり座の神話の1つに、太陽神の子パエトンが、さそりを見て手綱を落とす話があります。
ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』の話です。パエトンは、父の太陽神から太陽の車を借りました。
空の高いところで、パエトンは大きなさそりを目にしました。2つのはさみを、弓のように大きく曲げていました。
パエトンはおびえて手綱を落とし、馬は道をそれて暴れ出しました。こうして地上は焼けてしまった、と語られます。
てんびん座は、もとはさそりのはさみだった?
さそり座の神話のころ、ギリシャのさそりはいまより大きな星座でした。はさみの部分が、のちのてんびん座です。
リドパスさんによると、ギリシャではさそりを2つに分けて考えました。体と針の部分と、「はさみ」と呼ぶ前の部分です。
紀元前1世紀に、ローマの人々がはさみの部分を、別の星座のてんびんにしました。ヒュギヌスも、さそりのはさみが広いので2つに分け、片方をてんびんと呼ぶ、と書いています。
いて座がさそり座を狙っている、という話は?
さそり座の東どなりのいて座が、弓でさそりを狙っている、という説明は日本の解説で見かけます。
ただ、古い文献では、いて座の射手は牧神パンの子クロトスとされることがあります。今回調べた古典の英訳には、さそりを狙う筋は見つかりませんでした。
さそり座の星の名前と意味は? アンタレスの意味は?
| 星の名前 | 符号 | 明るさ(等級) | 体の場所 | 名前の意味 | 日本の呼び名 | 中国の呼び名 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| アンタレス | α | 0.9(変光する) | 心臓 | 火星(アレス)に似たもの。「火星の対抗者」とも訳される | 赤星・豊年星・酒酔い星など | 心宿二(大火) |
| シャウラ | λ | 1.6 | 尾の先の針 | 針 | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 尾宿の星 |
| サルガス | θ | 1.9 | 尾 | (この記事では扱わない) | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 尾宿の星 |
| さそり座ε星 | ε | 2.3 | 尾の付け根 | (この記事では扱わない) | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 尾宿の星 |
| ジュバ | δ | 2.3 | 頭のまん中 | 額 | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 房宿の星 |
| さそり座κ星 | κ | 2.4 | 尾 | (この記事では扱わない) | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 尾宿の星 |
| アクラブ | β | 2.5 | 頭 | さそり | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 房宿の星 |
| レサト | υ | 2.7 | 尾の先の針 | (この記事では扱わない) | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 尾宿の星 |
| さそり座τ星 | τ | 2.8 | 心臓の東どなり | (この記事では扱わない) | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 心宿の星 |
| アルニヤト | σ | 2.9 | 心臓の西どなり | (この記事では扱わない) | 1つの星の和名は確認できず(S字の並び全体が魚釣り星) | 心宿の星 |
出典: SIMBAD(ストラスブール天文データセンター)の V 等級
さそり座でいちばん明るい星は、心臓の位置で赤く光るアンタレスです。明るさが少しずつ変わる星です。
アンタレスの名はギリシャ語から来ています。赤い色が火星(ギリシャ神話の軍神アレス)に似ているためです。
よく「火星の対抗者」と訳されます。リドパスさんは、星の名の研究者クニッチュの指摘を紹介しています。ギリシャ語では「火星に似たもの」とも読める、という指摘です。
アラビア語では、アンタレスを「さそりの心臓」と呼びました。一方、2世紀の天文学者プトレマイオスは、体の明るい3つの星のまん中の赤い星、と書いています。
尾の先のシャウラは、アラビア語で「針」の意味です。頭のアクラブは「さそり」、ジュバは「額」の意味と説明されています。
さそり座の和名は? 釣り星・赤星とは?
さそり座の和名で広く知られるのは「魚釣り星(うおつりぼし)」です。S字の星の並びを釣り針に見立てました。
三菱電機のコラム「星空の散歩道」が紹介しています。魚釣り星は、瀬戸内地方を中心に古くから呼ばれてきた名前です。
S字の尾の部分は、ちょうど天の川の中にあります。夏の夜、暗い場所で見ると、光の帯に針が沈んでいるように見えます。
魚釣り星・釣り星は、どこで呼ばれていた?
さそり座の釣り針の和名は、瀬戸内のほか、能登や沖縄でも記録されています。
教科書の出版社、大日本図書の「星や月」は、次の呼び名を紹介しています。
| 呼び名 | 指す星 | 伝わっていた地域 | 見立て |
|---|---|---|---|
| ウオツリボシ(魚釣り星) | S字の星の並び | 瀬戸内海(瀬戸内地方を中心に) | 釣り針 |
| ツリボシ(釣り星) | S字の星の並び | 能登 | 釣り針 |
| イユチーャブシ(魚釣り星) | S字の星の並び | 沖縄 | 釣り針 |
| ヤキナマギー(焼野の釣針) | S字の星の並び | 沖縄 | 釣り針 |
| タイツリボシ(鯛釣り星) | アンタレスのころの空 | (資料に地域の記載なし) | アンタレスが見えるころにタイが釣れる |
タイツリボシは、星の見え方と漁の時期を結びつけた呼び名です。 和名には、暮らしの暦としての役目もありました。
季節ごとのほかの星の和名は、星の和名一覧で読めます。
アンタレスの和名は? 赤星・豊年星・酒酔い星とは?
アンタレスは、日本では赤い色から「赤星(あかぼし)」と呼ばれました。「豊年星」「酒酔い星」の名も伝わっています。
この3つは、三菱電機のコラムが日本での呼び名として挙げています。ただし、どの地方の呼び名かは書かれていません。
地域が分かる呼び名もあります。富山県の増田正之さんの調べでは、次の2つです。
- アカミノホッサマ:富山県黒部市生地
- ホウネンボシ:富山県入善町舟見
ホウネンボシは「豊年星」と同じ名前です。豊作と結びつけられた星だったことがうかがえます。なぜ豊年なのか、なぜ酒酔いなのかは、今回の資料には説明がありませんでした。
アンタレスの赤は、街なかでも目で分かります。夏に南の低い空で、ひとつだけ赤い星を探してみてください。
さそり座は中国で何と呼ばれる? 心宿・大火とは?
さそり座の星は、中国では「房宿」「心宿」「尾宿」の3つに分かれます。アンタレスは「心宿二」です。
房・心・尾は、月の通り道に沿って空を28に分けた「二十八宿」の一部です。国立天文台の暦の解説では、東の「青龍」の7つの宿に入っています。
大阪市立科学館の嘉数次人さんの解説では、アンタレスは「心宿二」と表記されます。心宿の2番目の星という意味です。
房宿・心宿・尾宿は、どの星?
さそり座の頭が房宿、心臓のまわりが心宿、曲がった尾が尾宿です。
リドパスさんの解説をもとに、表にまとめます。
| 中国の宿 | 意味 | さそり座の星 | 青龍の体の場所 |
|---|---|---|---|
| 房宿 | 部屋 | 頭のβ・δ・π・ρの4星 | 腹 |
| 心宿 | 心臓 | アンタレスと両どなりのσ・τの3星 | 心臓 |
| 尾宿 | 尾 | εからλ・υまでの9星 | 尾 |
ギリシャのさそりの尾は、中国では竜の尾でした。 同じ曲がった星の列が、どちらの文化でも「しっぽ」に見えていたことになります。
アンタレスは古くは「火」と呼ばれました。皇帝の座にもたとえられ、両どなりの星は王子とされました。
「七月流火」の火はアンタレス?
さそり座のアンタレスは、中国の古い詩の言葉「七月流火」の「火」にあたるとされます。
新華社の記事によると、アンタレスは古代中国で「大火」と呼ばれ、季節を知る大切な目印でした。
「七月流火」は、暑さを表す言葉ではありません。大火が西へ沈んでいき、暑さが引いて秋が近いことを表す、と説明されています。
中国にも、オリオン座とさそり座が会えない話がある?
さそり座とオリオン座が会えない話は、中国にもあります。アンタレスは「商」の星、オリオン座の三つ星のあたりは「参」の星です。
中国の古い歴史書『春秋左氏伝』には、次の話があります。
伝説の帝王の高辛氏に、閼伯と実沈という2人の息子がいました。2人は仲が悪く、毎日のように戦いました。
そこで帝は、閼伯を商丘に移して「辰」の星を受け持たせました。その星が「商星」です。実沈は大夏に移され、「参」の星を受け持ちました。
新華社の記事は、アンタレスを古くは「商星」とも呼んだと紹介しています。そして、参と商は空のほぼ反対側にあり、一方が昇ると他方が沈む、と説明しています。
唐の詩人杜甫は「人生不相見、動如參與商」と詠みました。人が会えないのは、参と商のようだ、という意味です。
ギリシャでは狩人とさそり、中国では仲の悪い兄弟。 同じ2つの星座が、どちらでも「会えない2人」になっています。
ポリネシアでは、さそり座はマウイの釣り針?
ポリネシアの島々には、さそり座のS字を釣り針と見る伝承があります。英雄マウイが島を釣り上げた針です。
三菱電機のコラムも、海の国では、さそり座を釣り針に見立てることが多い、と書いています。日本の魚釣り星と、同じ見立てです。
マオリのテ・マタウ・ア・マウイとは?
ニュージーランドのマオリは、さそり座を「テ・マタウ・ア・マウイ」と呼びます。マウイの釣り針という意味です。
ウェリントン博物館群の解説によると、マウイはこの針で、海から北島を釣り上げたとされます。
海を進むと、陸地は水平線の向こうから引き上げられるように見えてきます。解説では、この話をそのたとえとしても紹介しています。
同じ解説には、季節で呼び名が変わることも書かれています。
- 4〜6月:マナイア・キ・テ・ランギ
- 7〜9月:テ・マタウ・ア・マウイ(マウイの釣り針)
- 10〜11月:タマレレティの舟のへさきの一部
ハワイでは、さそり座を何と呼ぶ?
ハワイでは、さそり座の尾と針を「カ・マカウ・ヌイ・ア・マウイ」と呼びます。マウイの大きな釣り針の意味です。
マウナケア天文台群の記事は、「マーナイアカラニ」という別の呼び名も紹介しています。どちらも、マウイの釣り針を指す名前です。
日本の瀬戸内・能登・沖縄と、太平洋の島々が、同じ星を同じ釣り針に見ていました。 海とともに暮らす人の目には、S字が針に見えたのかもしれません。
さそり座は、ギリシャより前からさそりだった?
さそり座は、ギリシャよりずっと前から、さそりの姿で見られていました。
リドパスさんによると、シュメールの人々は5,000年以上前からこの星座を知っていました。呼び名は「ギル・タブ」(さそり)です。
同じ星の、地域ごとの呼び名はどう違う?
| 星 | ギリシャ・西洋 | 日本(和名) | 中国 | マオリ(ニュージーランド) | ハワイ |
|---|---|---|---|---|---|
| さそり座のS字全体 | オリオンを刺したさそり | 魚釣り星(瀬戸内)・釣り星(能登)・イユチーャブシ(沖縄) | 房宿・心宿・尾宿(青龍の腹・心臓・尾) | テ・マタウ・ア・マウイ(7〜9月) | (記録を確認できず) |
| アンタレス | さそりの心臓。名は「火星に似たもの」 | 赤星・豊年星・酒酔い星、アカミノホッサマ(黒部市生地) | 心宿二・大火・商星 | (記録を確認できず) | (記録を確認できず) |
| 頭の星(β・δなど) | さそりの頭 | (記録を確認できず) | 房宿(部屋) | (記録を確認できず) | (記録を確認できず) |
| 尾と針(λ・υなど) | 尾と針(シャウラ=針) | 釣り針の先 | 尾宿(竜の尾) | (記録を確認できず) | カ・マカウ・ヌイ・ア・マウイ(マウイの大きな釣り針) |
表のとおり、同じS字が、毒のさそり・竜・釣り針と、まったく違う物に見立てられています。
「記録を確認できず」は、この記事を書くときに出典を確かめられなかったところです。呼び名が無かった、という意味ではありません。
さそりの尾も、竜の尾も、釣り針も、曲がった星の列を「先の曲がった物」と見ています。 見立ては違っても、目の付けどころは同じです。
さそり座の神話を思い出しながら星を見るには?
さそり座は、日本では夏の夜、南の低い空に見えます。まず赤いアンタレスを探すのが近道です。
7月ごろの夜9時ごろなら、南の空の低いところに、赤い1等星が見つかります。それがアンタレスです。
アンタレスの右上に、縦に並ぶ3つほどの星があります。そこがさそりの頭(房宿)です。
アンタレスから左下へ、星をたどってみてください。尾が大きく曲がり、最後に針の2つの星(シャウラとレサト)が並びます。
- 尾のあたりは天の川の中。暗い場所なら、釣り針を水に垂らしたように見える
- 東どなりには、いて座の南斗六星がある
- オリオン座:夏の夜の空には無い。冬の夜に南の空へ探す
尾は地平線に近く、建物に隠れがちです。南の空が開けた海辺や高台だと、S字の全体が見えます。
さそり座の神話でよくある質問は?
さそり座の神話を子ども向けに言うと?
いばった狩人オリオンを、大地の女神が送った小さなさそりが刺した話です。ゼウスが両方を星にしたので、いまも空で追いかけっこをしています。
さそり座の神話でさそりを送ったのは誰?
古い文献では、大地の女神(ガイア)か女神アルテミスです。ヘラとするのは、日本の解説などで見かける形です。
さそり座と一緒に出ない星座は?
オリオン座です。2つは空のほぼ反対側にあり、神話では、さそりをこわがったオリオンが逃げていると語られます。
アンタレスを日本語で何という?
赤い色から「赤星(あかぼし)」と呼ばれました。豊年星・酒酔い星の名もあり、富山県黒部市生地ではアカミノホッサマと呼ばれていました。
さそり座の中国名は?
さそり座の星は房宿・心宿・尾宿に分かれます。アンタレスは心宿二で、古くは大火とも呼ばれました。
さそり座はいつ見える?
日本では夏の夜に、南の低い空で見やすくなります。冬の夜は太陽の近くにあるので見えません。
出典
- Theoi Project「Skorpios」(ヘシオドス断片・アラトス『ファイノメナ』・ヒュギヌス『天文詩』2.26・オウィディウス『祭暦』5の英訳)
- Theoi Project「Phaethon」(オウィディウス『変身物語』の英訳。さそりを見て手綱を落とす場面)
- 呉市かまがり天体観測館「天文学入門16 星座の世界③」(ヘラがさそりを遣わしたとする解説の例)
- Ian Ridpath「Star Tales: Scorpius」(2つの異伝、てんびん座、アンタレスの名、中国の房・心・尾、シュメールのギル・タブ)
- 三菱電機 DSPACE「星空の散歩道」vol.67「南の空に輝く魚釣り星」(2011年6月24日)
- 大日本図書「星や月:うおつりぼし」
- とやまの星の和名(増田正之『越中の星ものがたり』より。富山県の理科教育の資料)
- 嘉数次人「中国星座の恒星名」(大阪市立科学館『月刊うちゅう』2021年2月号)
- 国立天文台 暦計算室「暦Wiki:二十八宿」
- 新華社(科技日報に転載)「21日看『大火』与『嫦娥』上演『星月相伴』」(2026年8月19日。中国語)
- 『春秋左氏伝』昭公元年(ウィキソース。中国語の原文)
- 杜甫「贈衛八處士」(ウィキソース。中国語の原文)
- Museums Wellington「Scorpius」(マオリの呼び名とマウイの釣り針)
- Maunakea Observatories「Hawaiian Skies: Hinaiaʻeleʻele 2026」(ハワイの呼び名)
- SIMBAD(ストラスブール天文データセンター):星の明るさ(V 等級)と星の固有名